アラサーライター吉原由梨の「ようやく大人 まだまだ女」別館

男女や家族を含む人間関係、家庭、仕事、メンタル、生き方について。

最初の企業で叩き込まれた基礎の基礎が、今でも役に立っている

私は新卒で入社した企業を一年で辞めた。

原因はパワハラでもモラハラでもなく、外資系IT関連企業のスピード感とスケール感と業務量に、新人女子社員が体力的・気力的・能力的に追いつけなくて倒れた。ただそれだけのこと。

なので、企業側に落ち度は無く、むしろそこで叩き込まれた「学生から社会人になるための意識変革」がその後の仕事の役に立ってくれている。

 

◆徹底したコスト意識

入社直後の研修で叩き込まれたのは「君たちはいまここに存在しているだけで会社にとってコストである」ということ。

研修を受けているだけで何も生み出さない社員に支払われる給料、企業が国に納める社会保険料、研修に必要な人件費、使用しているホールや会議室の光熱費、配布される資料の作成費、当然すべてコストである。

「一秒一秒、会社のコストを膨らませていることを十分に意識して、研修に励んでほしい。」

という初日の人事担当者の言葉をよく覚えている。

 

◆お金を「払う立場」から「もらう立場」へ

学生は、自分なり親なりが学費を支払って勉強している。が、就職すればお金をもらう立場だ。会社でやる作業は研修だろうがなんだろうが「お金をもらって」する作業である。悩むばかりで成果物を報告できない作業、長いばかりで結論の出ない会議などもってのほか。自分の行動が対価に値するものかを常にチェックする。

大学生に毛の生えた程度の新入社員は、意識の180度転換を求められる。

 

◆納期に間に合わなければ0点

仕事には納期がある。クライアントの満足度を高めるために仕事の質を高めたい、とどんなに熱心に作業に励んでも、納期に間に合わなければ何もしなかったのと変わらない。

学生の頃は、ちょっと締め切りをすぎたくらいなら熱意を示せばなんとかレポートを受理してもらえて、評価の対象にしてもらえたものだが、ビジネスシーンでそんなことが起きるのはまぁドラマの中くらいだろう。珍しいからドラマになるのだ。

「何が何でも納期は守れ。」

OJTで叩き込まれた。

 

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どれも超基本的なことだ。これを読んだ方の大半は、当たり前のことを何を今さら、と思うだろう。

 

でも、意外とわかっていない人にも遭遇する。

病気退職して、次の職場に就職したとき、おじさま方の意識のゆるさに度肝をぬかれた。守られない納期、着地点の設定なしに開始して結論の出ない無駄な会議に何度いらついたことか。

文化の違い、で片づけてしまえば良いだけかもしれないが、私は新卒でこの2番目の職場につとめていたら、一生上述の3点を明確に意識できなかったんじゃないかと思う。

そしてきっと、「お金をいただいてものを書く」ということも趣味の延長程度にとらえて、納期もぐだぐだな、ダメフリーライターの代表になっていたことだろう

 

だから、基礎の基礎を叩き込んでくれた最初の職場にはとても感謝している。

 

にもかかわらず、何もできない「コスト」のまま退職してしまいもはや回収の見込みのない不良債権状態になってしまって、大変申し訳ない。

しかもそんな不良債権人間に、退職後2年くらい経った頃だろうか。内輪の飲み会をやるから来ないかと声をかけてくれた。せっかくなのでと図々しいのを承知で行ってみると温かく迎えてもらえ、「今はあたらしい職場でなんとかやってます。」と近況報告をし、四方山話で大盛り上がりした。そして驚いたことに、解散後にマネージャーから「吉原さん、もう一度一緒にやりませんか?その気があれば、私は本気で迎えますよ。」というメールをいただいたのだ。

……なんと懐の広い。むだに高学歴なくせに何も貢献しなかった人間に、もう一度来い、とはなかなか言えない。

また同じことになるのが怖かったので丁重にお断りさせていただいたが、この恩は一生忘れないと思う。

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私がそこに社員として戻ることはもうないだろうが、いつか何かの形で恩返ししたい。その日を迎えるためにも、上述の3点をいつも頭の隅に置きながら今の仕事に励もう。

 

ということで、お仕事のご依頼まってます。(結局宣伝)