アラサーライター吉原由梨の「ようやく大人 まだまだ女」別館

男女や家族を含む人間関係、家庭、仕事、メンタル、生き方について。

婚活与太話。しゃべりすぎる渋谷の男は、繭のなかで生きていた。

さて今回は、かつて私が出会った、とある男性について。

彼と出会ったのは、婚活パーティーでした。
そう。私、20代中盤で婚活パーティーに行ったのです。
もちろん合コンなんかにも顔を出していましたが、何事にも「傾向と対策」を重視する私。
数年後にやってくるであろう「ほんとにさっさと結婚したいんだけど!!」の本気婚活の時期のために、数年前からの市場調査&場慣れの必要があるとふみ、友達と二人で(←ここら辺がまだ本気度が足りない)参加しました。

そこで出会ったのが、Tさん。
渋谷で働き渋谷に住む当時35歳。(私より10歳近く上)
身長168㎝、細身、超有名私大卒。

第一印象は「ふかわりょう」だったけれど、なんとなく私を気に入ってくれたようだったし、話した感じもよかったので連絡先を交換しました。

後日、
「金曜日の夜、お食事でもどうですか?何か好みはありますか?」とお誘いがあったので
「中華料理と鍋料理以外なら、おまかせします☆」と丸投げし、当日銀座の待ち合わせ場所へ。

連れて行ってくれたのは、名前は思い出せないがクレームブリュレが絶品らしい何やらおしゃれな焼き鳥屋さんでした。
カウンターに並んで座り、ちょこちょこ飲み食いしながら、お互いの話が始まります。
そこで分かったのは、彼が某有名企業の課長補佐なこと、ご両親はいま東京近郊にいらして有名企業勤務の弟さんは婚約中なこと、結婚歴はないこと、小さいころは転勤族で転校ばかりだったこと。
同じように私のことも聞かれます。出身地、親の職業、学歴、職歴、いまの仕事について、などなど。なんだか品定めされている気分でした。
それに、「いや、うちの両親も俺の結婚が遅いの心配してて、『結婚するときにはマンションくらい買ってあげるわよ』って言ってるんだよ~。」とさりげなく結婚メリットアピールまで。
違和感を覚えかけましたが、考えてみればお互いバックグラウンドを全く知らないし、婚活パーティで出会ったのだからこんなもんで普通かなと。

2件めは行きつけらしいバーに移動し、そこで私はひたすら「古田敦也という男の素晴らしさ」について語りまくっていました。たしか「スポーツとか観る?」と聞かれた流れだったと思います。(高校生からの大ファンなので) キャッチャーで四番ということのすごさから、苦労人ぶり、選手会長時代の「昼は交渉、夜は試合」のハードスケジュールをやりこなした責任感と意志の強さ、スト決行の決断力、野球バカでないところ、ユーモア、ソフトな関西弁、そのすべてが素晴らしいとカクテル片手に熱弁しまくる若い女を見て、ドン引きするかな~と思いきや、ご満悦の様子。
「いや~、若い子とキャッチャーの素晴らしさを語り合えるとは思わなかったよ」と楽しんでくれたようです。

1度目のデートは、お互いおそらく「悪くはない」程度の感触で終えた感じでした。
彼の「身上調査」もクリアしたようですし。


その後、何度かデートを重ねているうちに、少しずつT氏のことが分かってきました。

まず基本的に、仕事が忙しい。というのも、毎晩夜中の2時にメールが来るんです。
「おつかれさまです。今帰りです。おやすみなさい。」
・・・日報か。
ほんとに自動送信機能なんじゃないかと思うくらい、毎日毎日同じ時刻に来ます。私は「忙しいアピール男」が大嫌いなので、一瞬アレルギーを起こしそうになりましたが、まぁ意図があってのことじゃないかもしれない、と性善説に立つことにし、適当に返信してました。

そして、なかなかのグルメです。

といっても、三ツ星レストランとかホテルのメインダイニングに行くようなリッチな感じではなく、「そこまで高くはないんだけど雰囲気が良くて味がしっかりしてる」系のお店に連れて行ってくれるんですね。「お茶を飲む」といってもチェーン系のカフェではなく、えらく凝った渋い内装の喫茶店で、丁寧に淹れたコーヒーとシフォンケーキを食べる、とか。ステーキやら和食やらワインバーやら、美味しいお店に連れて行ってもらいました。

美味しいものが食べられるので、基本的にデートは楽しかったんですが、気になる点がありました。
自慢話が多いのです。それも、なんとも遠回りな。
上にも書きましたが、弟さんが婚約中で、結納にT氏も出席したそう。その後あったとき、
「いや~、相手のお嬢さん、弟よりさらに若いから、俺ひとりなんか浮いてたよ。だって、お嫁さんからしたら、就活の面接官みたいなもんじゃん?三次面接くらい。」

「へ・・・?」

私は外資系企業→研究機関勤務だったので、日系民間企業の課長補佐がどれほどの立場なのか正確にははかりかねますが、「3次面接」は盛り過ぎだろうと。3次面接でやっとこさ課長補佐だったら、いったい御社で内定とるまでに何回面接受ければいいんだ!?と。

コメントにこまって、笑ってスルーしました。

いや、本来なら最初に私が「課長補佐」と言われたときに「すごーい!」と言っとけばよかったんでしょうし、結納の話をされた時も「Tさんが出てきたんじゃ、3次面接くらいですね☆」とかかわいく言えばよかったんでしょうが、ピンとこないし、私は本当に「すごい」と思ったときしか「すごい」と言えないのです。

しかもT氏は、本来相手の女性が言うところまで自分で言ってしまうので、コメントする余地が無い。

たとえば冬のボーナスの時期には、
「俺の部下がさ、残業代バンバンつくもんだからボーナス入れたら1000万とかいっちゃって!」
「えっ、それはすごいですね。」
「俺さ~、管理職になったから逆に年収下がっちゃって、」
(ここで終わってくれれば「それって管理職のつらさですよね。1年お疲れ様です!」とか言えるのに、)
「まぁ、900くらいかな」とよどみなく続く。

そうですか。やはり一言多い。


またあるときはお友達の結婚式の司会を頼まれたそうで、
「素敵ですね!それははりきらないと~!」と話していたら、
「うん。嬉しいよね。だってさ、結婚式の司会って、本当にしっかりしてて信頼できる奴にしか頼まないじゃん?そういう意味でも、俺は評価されてるんだなって思って。」

・・・いやだから、最後の一文はあなたが言うことじゃないから。

しまいには、就職活動の話になったとき、
「リクルーター制度ってあるじゃん?あれって、いい新人連れてくると、その人の人事評価があがるんだって。」
(お願い、そこでやめて!なんなら私がお望みどおりの返しをしてあげるから・・・!) という私の願いもむなしく
「だからさー、おれ本当いろんな先輩から声かかって大変だったよ。」

完全にしゃべり過ぎです。



ここまで書くと、ほんとに嫌味な男のようですが、おそらく根は悪い人ではありません。
なんというか、女性への自己アピールが下手なのと、私に微妙に虚勢をはってたのかなと思います。
広い視野に立てばきわめてつまらないことですが、T氏と私の卒業した大学とでは、私のそれのほうが偏差値が高いのです。T氏はすごく自分の学歴に誇りを持っていて、経済界で抜群の結束力をもつというOB会にもこまめに顔をだし、おそらく社内でも学閥で順調に出世した部分もあるのでしょう。普通ならそれを告げた時点で「すごーい!」となってくるはずの女性がそうでもない。だから、あの手この手のしゃべりすぎアピールに出たのだろう、と私は踏んでいます。

言わずもがな、結局私はT氏と交際することはありませんでした。でもそれは彼が「しゃべりすぎる男」だったからではありません。
実際、T氏は35まで独身なのが不思議なほどの優良物件でした。容姿も悪くない、会話力もそこそこ、経済力も普通以上、家庭も問題なし、高学歴、浪費癖もない、と婚活市場では受けのよさそうな条件がそろっています。

ではなぜ独身なのか?単に出会いが無かったとか、タイミングが合わなかったとか、いろいろ考えられますが、
私自身がT氏と接していて思ったのは、彼が心から「パートナーが欲しい」と思っていないのです。
もちろん、婚活パーティーにくるくらいですから、彼女を作る意欲も結婚の意志もあります。女性に興味が無いわけでもありません。でも、自浄作用が強すぎて、一人の世界で完結している。他人との深い関わりを必要としていないのです。
人は、自分一人では処理しきれない感情のほころびや心の隙間があるときこそ、「誰かに聞いてほしい」「誰かそばにいてほしい」と強く思うものです。(行き過ぎると依存心になりますが。)おそらく、彼にはそういう瞬間が無い。だから心の底から強く強く「誰かを欲する」という感情がわきにくいのだと思います。(自浄作用があること自体は良いことなので、メリットとデメリットが表裏一体というか、難しい点です。)
それともしかしたらこれはT氏が転校生生活を送っていたことも影響しているのかもしれませんが、表面上は社交的で馴染み上手なのに、心を開かないのです。一歩踏み込もうとか近づこうとしても、とっかかりがない。

精神的に欲されていないことも、心の中に踏み込めないことも、相手には伝わります。私は、この人とは魂のやり取りはできないなと思いました。
T氏にとって結婚とは、社会的信頼のために必要だけど自分にかけている要素、であり、妻は「自分にふさわしく、子供をきちんと育ててくれる人」のようでした。価値観が一致していればそれもありでしょう。
でも私は、私を「妻業を果たせる人」や「あればよりいいけど無くても平気」な存在ではなく、「人生支えあって歩みたいかけがえのない相手」として求めてくれる人と結婚したかったのです。


T氏本人にも表現をマイルドにしてお伝えしたところ、
「うん、そうだと思う。」と納得してくれました。
そこでお付き合いする前に、お別れしたわけです。


さんざんなことを書きましたが、T氏にはいろいろと勉強させてもらいました。美味しいお店、バーで飲む楽しさ、はしご酒。(T氏のホームグラウンドだった)渋谷といえば109とマルイと居酒屋しか知らなかった学生に毛の生えた程度の私に、大人の楽しみ方を教えてくれました。
また、転職したてでようやく慣れてきたかな、くらいだった私にとって、10歳近く上で「育てる」経験もある男性管理職から聞く仕事の話は新鮮で、勉強にもなりました。私の仕事についてアドバイスをもらったこともあります。
プライドを持って働いている人からは、学ぶことが多いものです。…午前二時の定例メールは辟易しましたが(苦笑)


そんなTさん、いまはもう連絡もとっていないのでどうしているのか分かりませんが、
渋谷で相変わらず二時まで働き、
渋谷で相変わらず呑み遊んで、
元気にしていてほしいなと思っています。


きっと独身だと踏んでいます。

「昔の男の今の女」論。一度は心通った人だから。

私には高校時代、三年間かけて壮大なすれ違いを繰り広げた相手がいる。

お互い結構な年月真剣に好きだったのに、きちんと心が通ったのは三日間くらい?というすれ違いっぷり。そのころの記憶は、今でも思い出すとお互い苦笑いしながらもちょっと甘酸っぱいような、不思議な思い出だ。

 

もちろん今更どうこうなろうという気持ちは全くないけれど、共通コミュニティーにいるのでお互いそれなりに近況は入ってくる。

 

そんな彼と、一年ほど前に約10年ぶりに再会する機会があった。

何人かで会ったので、「甘酸っぱい思い出」の話なんか出るわけもなく、ケーキを食べながら、いまだ独身の彼の最近の婚活話を爆笑交じりに聞いていた。この10年彼も公私ともにいろいろあったようで、ストレスで味覚障害になったり、真剣に結婚を考えた相手との別れがあったり、焦ったお姉さんにつめよられたり、波乱万丈だった。

 

2~3時間盛り上がったあと解散の流れになり、なんとなく二人で並んで歩く瞬間があった。

 

「ねぇ、ほんとお願いだからいい人と結婚してよね。」と私。

「うん、ほんと頑張るわ―。」と彼。

そろそろ解禁かな?と思い、

「だってさ、ほら。一度は自分が好きになって好きになられた相手だよ?幸せになってほしいし、見る目あったなって思いたいよ。」

「うん。だよね。俺もそれ思う。まじプレッシャーだわー。あー!」

 そこまで話してお互い笑って「じゃーねー」と別れた。

 

 

未だ彼から「結婚します」の連絡はないので、悪戦苦闘中なのであろう。

 

帰り際彼にかけた言葉は私の本音で、

よく「元彼が自分よりいい女と結婚した!むかつく!悔しい!」という人がいる。

気持ちは分からないでもないが、私はどちらかというと逆だ。

いっときのこととはいえ、一度は好きになり、自分を好きになってくれた人である。幸せになってほしいし、素敵な女性と結婚してほしい。

勝手な話ではあるがその方が、「やっぱりこの人には女性を見る目があったのね」と彼の再評価と自分自身の心の平和につながるし、「そんな人に恋して良かった」と思い出もまた美しくなる。

なぜなら、異性の好みや結婚相手の選択は、その人の価値観そのものだからだ。パートナーを見れば、その人の人生における優先順位や感性が、プロジェクターでスクリーンに映し出されたかのように明白に見えてくる。

少し話がそれるが大好きな俳優・堺雅人さんがご結婚されたとき、ショックで一週間立ち直れなかった。が、お相手が菅野美穂さんということで「やっぱり、彼は役者としての魅力だけでなく、女性を見る目もあったのか。」とますます好きになった。エッセイ本などで彼の文章から伝わってくる何とも言えない品性や思考回路、独特の感性に惹かれていたが、きわめつけに生涯の伴侶に菅野美穂さんを選ぶ。役柄越しでない彼の価値観がまざまざと見えてくる。来年の大河ドラマも一層楽しみだ。

 

同年代や年上ばかりの元彼は、ほとんど結婚した。パパになった人もいる。

自分が失恋した直後にそのうちの一人が結婚したニュースを聞いたときはさすがにへこんだけれど(笑)、お相手がとても美しく、知性的で、気立てのよい女性だったと結婚式に列席した共通の友人から後日聞いて嬉しかった。

私が知る範囲では、いまのところ元彼たちの奥様事情は良好である(笑)

 

昔の男の今の女は、美しければ美しいほど、気立てが良ければ良いほど、そして才媛であればあるほど良い。なんなら、「これは私は絶対にかなわないな」と思う何かを持っている人でもいい。これが私の持論である。

 

ただしこれは、強烈な嫌悪感なく別れられた相手のみだ。

残念ながら、「もう顔も見たくない」「黒歴史」レベルまで嫌いになって別れた男性の幸せは祈れないし、見る目があったかどうかなんてどうでもいい。あくまで、別れてしまったけれど、いい人だったなと思える人限定だ。所詮、私も「好き嫌い」に左右されるちっちゃい女なので。

 

残る方々。絶対にここは見ていないだろうけど、素敵な女性と結ばれることを願っている過去の女がここにいますよ。好みがややこしそうな人ばっかり残ってるけど、そのうち、運命だと思える女性を伴侶にしてね。

はじめまして。

吉原由梨の「ようやく大人 まだまだ女」別館にお越しくださり、ありがとうございます。

 

簡単に自己紹介を。

都内在住、30代初級者のフリーライター/コラムニスト。

地方で生まれ育ち、大学進学で上京。都会でもまれながら個性豊かな友人たちと濃い大学時代を過ごす。田舎娘、世界は広いことを知る。

その後外資系企業に就職するものの、学生時代からの持病が悪化し、退職。

教授秘書として再就職した後は、ワーフライクバランスを大切にをテーマに、並行して旦那さがしも。

結局ひょんなことで再会した同窓生と結婚。

約3年間の専業主婦生活を終え、フリーライターとして活動を開始。現在アラサー女性向け媒体で執筆中。

 

10代20代から今まで山とみてきた人間関係、

人並みには酸いも甘いも味わった恋愛経験、

部活動や大学受験戦争サバイバーとしての戦歴、

東京の濃い大学生活・社会人生活で観察し続けた周りの人たち、

旦那さがしの日々、

闘病生活、

多忙すぎる夫との生活、

社会復帰、

一人の女としての人生への迷い

 

そのあたりから感じたことや洞察、そして現在進行形で日々感じることを、些細なことからちょっとしっかり考えたいことまで綴っていこうと思います。

 

どうかお付き合いくださいませ。